LD(学習障害)って何だろう? 特徴と関わり方について
ご自身のお子さんで、「他の勉強は問題ないのに特定のことだけすごくできない・・・。」という悩みを抱えていませんか?また、学生時代にそういう方に会ったことがある人もいるかもしれません。「学習障害」という名前にある通り、ただ「学校の勉強ができない人」と思われがちですが、そうではありません。では、LD(学習障害)とは一体どのようなものなのでしょうか。解説していきたいと思います。
LDの定義について
LDとは、Learning Disability/ Learning Disorderの略で、Disabilityは教育において、Disorderは医学的によく用いられる言葉です。アメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-5では、限局性学習症/限局性学習障害(Specific Learning Disorder)と呼ばれています。全体的に知的発達の遅れはなく、「読み」「書き」「計算」の特定の課題に特に困難を示します。そのため、知的障害とは異なります。
LDの特徴としては次のようなものが挙げられます。
1、読みの困難さ
(単語を間違えてしまう、ゆっくりとためらいがちに音読する、発音ができないなど)
2、読んでいるものへの意味理解の困難さ
(発音はできるが、文章への理解や、つながりなどを理解することが難しいなど)
3、綴りの困難さ
(母音や子音の入れ忘れや、不必要な付け加えなど)
4、文章表現の困難さ
(文法や句読点のミスの多さ、段落を分けられない、上手く文章で言い表せないなど)
5、数の概念、数値、計算の習得の困難さ
(数の大小を捉えられない、数値が頭の中でイメージできずに指で計算をするなど)
6、数学的推論の困難さ
(問題を解くために、数の概念や数学的事実、数学的方法を用いることが困難)
参考:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition. (DSM-5) American Psychiatric Association. American Psychiatric Association Publishing. 2013.
限局性(Specific)という言葉が示しているように、これらの特徴全てが当てはまるわけではなく、いずれかの課題が非常に苦手であることが特徴です。学齢期のお子さんの5%から15%が学習障害を持っていると言われています。大人になるまで気づかれないというケースも往々にしてあります。
どう判断していけばいいの?
「もしかしたらLDかも・・・。」と不安に思うことがあるかもしれません。しかし、親御さんの方で安易に判断してしまうのは危険です。
例えば、低学年の児童の場合、生年月日が学習に大きく影響してきます。早生まれの場合、読み書きが周りに比べて遅れてしまうということはよくあります。1年生の4月にはついていけなかったけど、2年生になる頃には周りとの差はそれほど大きくなくなったという事例はたくさんあります。筆者は3月生まれで、運動面でかなり苦労しましたが、2年生以降は平均以上の成績が取れるようになりました。
また、LDを持つ人の3分の1はADHD(注意欠陥多動性障害)を持っている可能性があるとされています。(ADHDについては別記事で取り扱っています。)「うちの子は全然言ったことを理解してくれない・・・。」という悩みを抱えていたとします。LDを持っていて、親が言った言葉を理解ができていない可能性もありますが、ADHDの特性を持っているために、そもそも注意がよそに向いてしまっているので、言葉すら届いていない可能性もある訳です。「読みが全くできない」ということであっても、ADHDの特性上「集中の持続ができていない」だけの可能性もあります。LDとADHDが併発されているかもしれませんし、ADHDだけを持っているかもしれません。
このように、生まれ月や他の発達障害との関係も見ていかなくてはなりません。気になる症状があった場合はその都度記録を取り、改善が難しそうな場合は専門機関への受診をおすすめします。
どう関わっていけばいいの?
他の記事でもお伝えしている通り、お子さんがどこに躓いているかを正確に見極める必要があります。その際、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するの6つの領域から考えていく必要があります。また、他の発達障害との関連もありますので、あらゆる視点から原因を考えていかなくてはなりません。では、どのように対応していけば良いのでしょうか?
ここでICT機器が非常に役に立ちます。例えば「読み」が難しいお子さんに対して、特に文字を音声に変換する力(デコーディング)に困難がある場合、音声読み上げ機能が使えます。また、「読み」については背景の白がまぶしく感じてしまい、文字が見えない場合もあります。その場合は反転させ背景を黒に文字を白にすれば読むことができるかもしれません。フォントを変更したり、文字の大きさを変えることもできます。
他にも「書き」に困難がある場合は音声入力をすれば文章作成が可能になります。またタイピングであればスムーズに書けるということもあります。この方法であれば文字の形の認識が難しい場合にも、手先の不器用さからくる書字困難にも対応できます。
重症度によって継続的に専門的な指導が必要な場合もありますし、配慮によって学習に主体的に参加できる場合もあります。低学年のうちに決めつけるのは早いと上記で話しましたが、早期に介入することでより効果的に指導できる場合もあります。専門家に頼らずともいくらでも方法論はありますので、保護者の方が試してみるのも良いと思います。
まとめ
LDを正しく理解していないと、学力の低下だけでなく、お子さんの心理的、精神的健康苦痛、就学、就業の困難さなど、様々な問題を引き起こしてしまうかもしれません。学習という特定の分野において困っているのに、他の困っていない分野にまで悪影響が出てしまうのは悲しいことです。先天的な脳機能の問題とされていますので、「完治する」という概念はありませんが、その子に合った正しい学び方を身につけることができれば、生涯困らずに過ごすことは可能になります。
ずっと家の人が子どもについているわけにはいかないので、困り感を感じている場合には学校にもできる限り協力をお願いしましょう。例えば、テストの際に「読字ができないので問題文の読み上げをお願いする」などです。理解のある学校ばかりではないので、迷惑に思われてしまうこともありますが、お子さんのためにきちんと伝えた方が良いでしょう。
もちろんLDを持っていなくても、お子さんにとってどういう学び方が合っているのか?を考えるきっかけにもなりと思います。この記事を読まれたみなさんにはお子さんが幸せになれる選択をしてほしいと思っています。
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