問題行動について考える ー原因とその対処法についてー
幼稚園や小学校の先生から「離席が多い」「友達に暴力をふるってしまった」「教室を飛び出してしまった」というような報告を受けて困っている保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。その場に合わない行動や周りに迷惑をかけてしまう行動をひとまとめにして「問題行動」と呼ぶことがあります。私たち大人はその「問題行動」に対してどのように考えていけばいいのでしょうか?
先にお伝えしておくと、これは全ての人が使えるHow toではなく、どのように考えていけばいいのか?という内容になります。保護者だけでなく、先生方にも考えてほしい内容をお伝えしていきます
そもそも問題行動って何?
誰にとって、何が問題なのか?この基準は明確ではありません。目の前でなされている「行動」は事実であり、そこに見ている人達が「問題である」と解釈を加えることで「問題行動」となります。
関西外国語大学教授の新井肇氏は次のように言っています。
「問題行動」とは、社会規範(法律や規則、常識やマナーなど)に照らしたときに、何らかの好ましくない意味を持つ行動をさす言葉です。
「反社会的問題行動」(暴力行為・暴走行為・窃盗・恐喝・いじめなど、欲求不満や不安を社会に対して攻撃的な形で示すもの)と「非社会的問題行動」(不登校・ひきこもり・自傷行為・自殺など、不安やストレスを解消しようとする行動が自己の内面に向けられ、社会的不適応を起こすもの)とに大別されます。
<児童生徒の問題行動を理解するための視点 NITSニュース第48号 平成30年7月6日 独立行政法人教職員支援機構>
よく校則をやぶる人、教師に対して反抗的な態度をとる人、そんな人を「問題児」と呼んでしまいます。確かに、周りの子どもは迷惑してしまうこともありますし、対応に追われる大人たちも困ってしまうと思います。それでは当の本人はどうなのでしょうか。困っているのでしょうか、それとも何かを伝えようとしているのでしょうか。次の章で問題行動の原因について考えていきます。
問題行動の原因 氷山モデルって?
大人はどうしても目の前の行動ばかりに目がいってしまいがちです。「やめなさい!!」と頭ごなしに叱ってしまうことでしょう。しかし、それでやめられたら苦労しません。原因には様々なものがあります。ここで、氷山モデルを紹介しましょう。
水面上に出ているのが、私たちが今目にしている行動です。その行動に対して場面にそぐわなかったり、他者に迷惑をかけていたりするものを「問題行動」と呼んでいます。多くの人がこの水面上に現れている行動そのものに着目してしまいます。 一方で水面下にあるのが問題行動の原因となるものです。原因には発達特性や、これまでの経験で学習してしまったこと、環境要因など様々な物があります。この「問題行動」を解決したいと考えた場合、この原因の究明と適切な処置を考えていくことが不可欠です。 発達特性とは認知や行動の特徴のことで、特定のことが人より苦手だったり、逆に優れた能力を発揮したりすることもあります。また、環境は周囲の人間関係はもちろん、音や視覚情報などの感覚刺激の量なども関係しています。そして、学習してしまったこととは、対人関係の失敗が積み重なり、「どうせ解決できない」と諦めてしまうことです。学習性無力感と言うこともあります。 様々な原因について考えられますが、どのように対応していけば良いのでしょうか?そもそもどのように原因を突き止めればよいのでしょうか。次の章で考えていきましょう。どのように対応していけばいいの?
まずはじめに、お子さんを取り巻く情報をできるだけ多く集めることが大切です。
「泣き叫ぶことが多い」という行動を解決したいと思った場合、どのような時にその行動が出てしまうのか、前後関係を見てみましょう。例えば、お友達とトラブルがあった後でしょうか、遊ぶ時間で周りが騒がしい時でしょうか、掃除などで机や椅子を引きずって大きい音が出ている時でしょうか。
ASD(自閉スペクトラム症)の特性を持っている場合、感覚過敏を持っていることも多いです。感覚過敏とは、人一倍感覚刺激に対して反応してしまうことをいいます。例えば、椅子を引きずる音に対して過剰に反応して泣き叫んでしまうのかもしれません。その場合、椅子に緩衝材をつけて音を軽減する方法があります。周りの声がうるさい場合、別室で落ち着かせたり、ヘッドホンをつけて音を遮断する方法もあります。
このように、原因がわかれば様々な方法を考えていく必要があります。ASDの特性を持っていると仮定するには、日常の課題への取り組みの方法や対人関係などもみていかないと判断ができません。家庭、学校、習い事、それぞれ様子に違いはあるでしょうか。その周りの人的、物的環境はどうでしょうか。色々な情報を集めれば仮説を立てることができます。
他にも、注目を浴びたいがために問題行動を起こしてしまうお子さんもいます。走り回ってしまう時、大人は追いかけることがほとんどだと思いますが、お子さんの表情はどうでしょうか。もしかしたらあなたと追いかけっこをして、かまってもらっていることを喜んでいるかもしれません。注目を浴びることが目的の場合、過剰にこちらが反応しないことで落ち着くこともあります。しかし、大人がきちんとその子に向き合い、対話をしているかどうかも考えていく必要がありますね。
まとめ
「問題行動」という言葉はわかりやすいので、子どもの状況に応じた行動ができていないことに対して、そう呼んでしまうことがあります。しかし、その行動は現象にすぎません。私たち大人が「問題行動」と解釈し、意味付けをしてしまっているのです。言い換えれば「この子どもは問題のある子どもだ」とレッテル貼りをしてしまっています。
目の前で起きている出来事に対して時に困ってしまうこともありますし、色々な状況が重なって対処できないこともあると思います。ですが、常に子どもの「なぜ」を問いましょう。それはお子さん自身にあるかもしれませんし、親のほうにあるかもしれませんし、周りの環境にあるかもしれません。先生からもらった情報、専門家からの情報、お父さん、お母さんからの情報、様々な側面から見ていくことが解決の一歩になります。「これをすればよい」という答えはなく、お子さんに合わせた対応が必要になります。相談窓口はたくさんありますので、一人で悩まず、そういったところを利用するのも良いでしょう。
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