得意を生かせば学びが変わる?! 「継次処理」と「同時処理」って?
お子さんがどういう学び方をすれば伸びるのかを知ることはとても大切なことです。育児だけでなく、教える仕事をしている人全員に知ってほしい内容になっています。
はじめに
子育てや子どもの指導に当たるとき、
「なんでこの子はこんなこともできないんだろう・・・。」
と悩まれた経験はありませんか?
・口で手順を説明したのにその通りにやってくれない・・・。
・図で渡しているのにその通りに動いてくれない・・・。
大人からすれば「こうすればわかるだろう。」と説明をするのですが、お子さんには届かないことがあります。
その原因は、もしかしたらその子の苦手な感覚を使っていることにあるのかもしれません。
「口で手順を説明する」とき、相手は「聴覚」を使って処理をすることになりますし、
「図で説明する」とき、相手は「視覚」を使って処理をすることになります。
人が情報を整理したり、記憶したり、理解したりするためには様々な感覚を使って処理をしています。
一体どの感覚を使えばわかってもらえるのでしょう?
あなたはどっちのタイプ?
例えば、A地点からB地点までの経路を覚えるとしましょう。
みなさんは普段どうやって道順を覚えますか?
①道順をメモする。
・Aから東へまっすぐ進む。
・最初の角を左に曲がる。
・曲がった先の角を右に曲がる。
・まっすぐ進む。
②地図を見る。
___________
⇨⇨⇨⇨B
_____ ↑ _____
I ↑ I
_____I ↑ I____
A⇨⇨⇨⇨⇨
___________
①を選んだ人は、言葉や聴く力が強く、「継次処理」が得意な可能性があります。
継次処理が得意な人は、地図だけで覚えることが難しく、道順を聞いたり、順序をメモしたりして覚える方がスムーズにいくことが多いです。
一方で②を選んだ人は、視る力が強く、「同時処理」が得意な可能性があります。
同時処理が得意な人は、地図を見ることで、視覚的に経路を覚える方がスムーズにいくことが多いです。
最近ではGoogleマップやカーナビなど、道順を教えてくれるツールが充実していますね。
こういったツールでは、矢印や道順が線でなぞられることで、視覚的にも教えてくれますし、設定をすれば音声でも教えてくれます。
継次処理が得意な人も、同時処理が得意な人も同じように使うことができますね。
継次処理って?
「継次処理」と「同時処理」という言葉が出てきました。
ここからもう少し詳しく説明していきましょう。
「継次処理」とは、情報を一つずつ順序立てて理解する方法のことです。
(宮城県総合教育センターH30年度研究成果物 特性理解編p4より引用)
部分から全体を捉えることが得意なので、一つ一つスモールステップで手順を示してあげることで、理解が得られやすくなります。
言語優位、聴覚優位なため、説明書などの文章があると良いです。
逆に、全体像をイメージすることが苦手なので、目的だけを伝えたり、曖昧な指示をしたりするだけだと動くことが難しくなります。
同時処理って?
「同時処理」とは、情報の全体を捉えてから、部分同士を関連づけて理解する方法のことです。
(宮城県総合教育センターH30年度研究成果物 特性理解編p4より引用)
「同時」という言葉から分かる通り、情報を同時にまとまりとして捉える力のことです。
全体から部分を捉えることが得意なので、目標や目的、理由を伝えるとタスクへの理解がしやすくなります。
また、視覚優位なため、図などの視覚的な提示があるとなお良いです。
逆に、順序立てて考えることが苦手なので、「なぜそれをするのか?」が分からないとタスクへの理解が得られにくくなります。
まとめ
私たち大人は知らず知らずのうちに自分の得意なやり方で教えてしまいがちです。
しかし、それがときに子どもたちへのつまずきになってしまっていることがあります。
基本的には「同時処理」と「継次処理」両方で提示できることが理想です。
例えば先ほどの経路の話では、地図(同時処理)を渡した上で、文章や口頭(継次処理)でも伝えることで、よりわかりやすくなるでしょう。
漢字の学習で躓いているのであれば、絵と文字をセットにして提示する(同時処理)、絵描き歌(継次処理)で手順を覚えるなどのやり方が考えられます。
「この子はできが悪いのかしら・・・。」と諦めずに、別の方法で教えてみてください。
もしかしたら驚くような成果を出せるようになるかもしれません。
引用文献
宮城県総合教育センターH30年度研究成果物 特性理解編(宮城県総合教育センター,平成30年)
参考文献
児童一人ひとりを大切にする教育的支援に関する研究-認知特性に応じた支援を通して-(中野正映,平成19年)
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