子どもの「なぜ?」どう対応すればよい? ー子どもの思考力を伸ばすコツー
子どもはいろいろなことに疑問を持ちます。いろいろなことに対してお子さんから「どうして?」「なんで?」と聞かれることは多いのではないでしょうか。その時に、すぐに答えを教えてあげるのではなく、「どうしてだと思う?」「どうしてそう思うの?」と「なぜ」を子どもに聞くとよい、という話は聞いたことがあるのではないでしょうか。
なんとなく聞いたことはあるけれど、本当に効果的なのか、どのような効果があるのかについて考えていきたいと思います。「なぜ」を問う力は大人にとっても大切な能力です。働いている方にも役に立つ内容ですので是非読んでみてください。
なぜなぜ期って?
2歳くらいになると、全て「イヤ!」と拒否をする「イヤイヤ期」というものが来ることが多いとされています。それをすぎると、3歳くらいから周りの人に対して質問ばかりするようになる「なぜなぜ期」がきます。心理学では「質問期」と呼んでいます。3歳くらいになると自分で行動できる範囲が広がり、周囲をよく観察するようになります。好奇心と思考力が伸びる時期ということもあり、「知りたい」という欲求が高まるのです。これは世界中の親を悩ませるものであるようで、質問攻めにあう恐怖からhorrible threes(恐怖の3歳)と言われることもあるようです。
子どもの「なぜ?」「どうして?」は3歳で終わるわけではありません。小学校に入ってからもいろいろなことに疑問を持ちます。こういった知的欲求を潰してしまうと、お子さんの可能性が狭まってしまいます。「なぜ」を問う力は是非つけていってもらいたいものです。
「なぜ?」を問う力はどうして大切なの?
「なぜなぜ期」について話しましたが、3歳で子どもの「なぜ?」は終わりません。小学校に入ってからも様々なことに対して疑問の目を向けます。
大人である皆さんは日頃、身の回りのものに対して「なぜ?」という疑問をもっているでしょうか。人との関わりの中でも「なぜ?」と思うことはないでしょうか。大人になると世の中のことが色々わかってきて(わかった気になって)あまり疑問に思うことも少なくなってくると思います。「なぜ?」を問う力はどのように役に立つのか、解説したいきたいと思います。
・多面的、多角的に物事を捉えられるようになる。(深い思考力を身につける)
例えば歴史の学習では「1185年に鎌倉幕府ができた」と出来事だけを暗記することが多いです。トピックを頭に入れるだけでは深まりがありません。「なぜできたのか?」「どうやってできたのか?」と「なぜ」を問うことで前後の出来事や背景を調べるようになるでしょう。色々な視点から物事をみることができるようになるので、純粋な暗記よりも記憶に残りやすく、「この出来事って他の時代にも似たようなことが起きているかも・・・」と他のトピックと結び付けて考えることができるようになります。
深い思考力をもっている人は、出来事をそのまま受け取ることをしません。目の前で起きていることにも「結果と原因」があります。原因(なぜ)を見ることで、次に起きる問題を未然に防いだり、起きてしまった結果へのリカバリーが可能になります。「なぜ」を問う力は応用可能な力なのです。
・コミュニケーションがスムーズにいく。
あなたが店員だったとします。お客さんから「○○ください。」と言われた時、どう返しますか?「○○ですね。今お持ちします。」と多くの場合答えると思います。一見スムーズなやり取りに見えますが、場合によってはお互いにとって不利なやり取りになる可能性があります。
例えば、「どういう風に使われますか?」と聞くとどうでしょう。もしかしたら別の商品のほうがお客さんにとって向いているかもしれませんし、もう少しランクの高い商品を勧めることができるかもしれません。もし売り切れだった場合どうでしょうか。「すみません。今品切れでして・・・。」とそこで話は終わってしまうともったいないですよね。「なぜ」を把握していれば代わりのものを提案できると思います。このように、「なぜ」を問うことは双方にとって利益のあることなのです。
これらをまとめるのであれば、「概念化する力」が身につくと言えます。
概念とは色々な説明のされ方をしますが、ここで言う概念化は「一つの出来事から普遍的な法則を見出すこと」です。
トラブルを繰り返していると、「このパターンはまた何か起きてしまうかも・・・?」と予想したことはありませんか?また、大人になってくると「このタイプの人はこう接するとうまくいく」と対人関係をスムーズに進められることはありませんか?これらも概念化の例です。多くの人が概念化を無意識に使っています。しかし、意識的に使うのと、無意識で使うのでは効果も問題解決に要する時間も大きく違います。「なぜ」を繰り返すと概念化を意識的に行うことができるようになります。
子どもの「なぜ?」に対して親はどのように接していけばいい?
「なぜ」がどのように役に立つのか、大人の方向けの説明をしてきました。子どもの頃から鍛えていけば、生涯役に立つスキルとなります。それでは、親として子どもの「なぜ?」にどのように接していけばいいのでしょうか?
1、子どもの「なぜ」を否定しない。
「そんなことどうだっていいでしょ!」と子どもの「なぜ」を否定してはいけません。知的好奇心が活発になる時期なので、寄り添ってあげると良いでしょう。
2、「なぜ」をたくさん持てる環境をつくる
いつまでも同じ場所にいては疑問に思う種が尽きてしまいます。外を散歩してみたり、旅行をしてみたり、いつもと違う場所にいくと大人でもたくさんの発見がありますよね。環境を変えて好奇心を煽ってみるのも子どもの「なぜ」を発達させる手助けになります。
3、「できた!」「わかった!」を積み重ねる
人間にとって成功体験は次のステップへの大きな糧となります。聞かれたからといって大人が全て回答しなくてはいけないわけではありません。本を買ってきて一緒に調べてみたり、インターネットで調べたりして、疑問を解消してあげましょう。「なぜ」から「わかる」までのプロセスを体験することで、将来的には自分で疑問の仮説検証ができるようになると良いですね。
おそらく自分では疑問に思わないようなことも聞いてくることがあるでしょう。自分自身の良い勉強にもなります。とはいえ、気負いすぎるのもストレスになってしまいますので、忙しくて対応できない時は正直に伝えて大丈夫です。一緒に楽しみながらやるのが一番良いですね。
「どうしてだと思う?」と問いかけることは良いこと?
「すぐに答えを教えない」「自分でまずは考えさせる」というのは、一見思考力を身につけさせるには効果的に見えますが、注意が必要です。この切り返しをずっとしていると、「どうせ教えてくれない」「もういいよ!」と知識を得ることへのハードルが高まってしまいます。やりすぎると学ぶことへの意欲が削がれてしまいます。
では、どのように使い分けていけばよいのでしょうか。それは、「深掘って考えることができるかどうか?」を見極めることが大切になってきます。
例えば「月はどうして丸いの?」と聞かれた時に「どうしてそう思うの?」と問いかけても深まりはあるでしょうか。もしかしたら天文学的には色々な説明ができるかと思いますが、それも仮説の域を出ないでしょうし、自分自身の生活に役に立つ物ではないと思います。
では「どうして車はあるの?」という疑問をもったとしたらどうでしょうか。車が動くメカニズムを説明してもよくわからないまま終わってしまいそうですよね。ここで「なぜ」を繰り返すとこうなります。
「どうして車はあるの?」
↓なぜ?
「早く移動をするため」
↓なぜ早く移動する必要があるの?
「欲しいものを早く手に入れるため。」
「怪我人や病人をいち早く助けるため。」
「状況に左右されずに安全に遠くまで行くため。」
このような「なぜ?」であればどんどん下に深堀りしていくことができます。深堀していくほど具体的になるので、自分の生活の役に立つところまで考えていけそうです。お子さんの「なぜ?」が深堀りしていく価値があるのかどうかを見極めていくと良いでしょう。
まとめ
子どもの「なぜ?」に対してどのような考えを持って接していけばよいかについて話してきました。親を悩ませる出来事は「なぜなぜ期」に限ったことではなく、対応が難しいことも多いかと思います。決して完璧である必要はありません。「こんなことも疑問に思うようになったのね!」「面白いこと考えるなぁ」「確かにどうしてなんだろう?」と子どもの成長を喜びつつ、一緒に探究してみてはいかがでしょうか。
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